父母が離婚した後も、こどもの利益を確保することを目的として、令和6年5月17日に「民法等の一部を改正する法律」が成立しました。
この法律では、父母が婚姻関係の有無にかかわらず、こどもを養育する責務を負うことが明確化されており、令和8年5月までに施行されます。
この民法改正のポイントは以下の通りです。
1.「親の責務等」のルールが明確になりました
このルール(新民法第817条の12等)は、親がこどもに対して負う基本的な責任と、親同士の協力義務を定めています。
・子の健全な発達:親は、こどもの人格を尊重し、年齢や成長に合わせて心と体が健康に育つように育てなければなりません。
・扶養の責務 :こどもが親と同程度の生活ができるように、生活費(扶養)を負担しなければなりません。
・親の協力義務 :婚姻関係の有無に関わらず、こどもの利益のために親同士がお互いを尊重し協力し合わなければなりません。
【ルールに違反する行為の例】
下記のような行為は、上記のルールに違反しているとされる場合があります。
※ただし、身体的・精神的DVや虐待等から逃げるなど、正当な理由がある場合は、このルールに違反しません。
・父母の一方から他方への暴行、暴言、脅迫など心身に悪影響を及ぼす言動や誹謗中傷。
・別居している親が、同居してこどもの世話をしている親の日常的な養育に不当に干渉すること。
・特段の理由がないのに、一方の親がもう一方の親に無断でこどもを遠くに引っ越しさせること。
・裁判所などで決まったこどもと別居親との交流(親子交流)を、特別な理由もなく拒否すること。
2.親権・監護等に関するルールが見直されました
・離婚後の親権について
これまで、離婚すると親権は父母のどちらか一人だけしか持てませんでした。新しいルールでは、次の2つの方法から選べるようになります。
単独親権:父母のどちらか一方だけが親権を持つ(これまでのルールと同じ)。
共同親権:父母の両方が親権を持つ。
・親権の決め方について
・親権の行使について
父母が共同親権を持つことになった場合、「すべてのことを二人で決めないといけないの?」と心配になるかもしれません。
法務省は、単独で行使できる行為や事項として次のように示しています。
日常の行為 (単独でOK) | 監護(こどもの世話)や教育に関する日常的なこと(例:今日の夕飯、遊びに行く場所、日々の勉強)は、共同親権でも一人で決めることができます。 |
特定の重要な事項 (共同で決定) | こどもの進学、大きな手術など、こどもの将来に大きく関わることは、二人で話し合って決めることが原則です。 |
急迫の事情 (単独でOK) | 身体的・精神的DVや虐待からの緊急避難や、急病で緊急の手術が必要な場合など、急いで対応しないとこどもの利益に悪影響がある場合は、一人で判断して行動することができます。 |
3.養育費の支払い確保に向け見直しがされました
養育費とは、離婚などで親が別々に暮らすことになっても、こどもが生活したり勉強したりするために必要な費用です。養育費を払わない人から、もっと確実にお金を受け取れるようにするための仕組みが強化されています。
(1)「法定養育費制度」の導入(金額を決める前の緊急対策)
(2)相手のお金に関する情報を集めやすくなる(情報開示命令)
(3)差し押さえの手続きがスムーズに(ワンストップ化)
4. 安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
新しい法律では、親子交流が「こどもの幸せ」のために安全に行われるよう、ルールが見直されました。
・祖父母などとの交流もルールに(親族との交流)
・DV・虐待に配慮した「試しに会う」制度(試行的実施)
・婚姻中別居の場合の交流も明確に
これまで、結婚したまま別居している場合(婚姻中別居)の親子交流については、法律のルールが不明確でした。
「養育費」と「親子交流」について
下記のページに、「養育費」と「親子交流」の取り決めに関する情報をまとめていますので、こちらもご確認ください。「養育費」と「親子交流」について
参考ページ
民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)についての詳細は、法務省ホームページ
(外部リンク)や下記のPDFをご覧ください。・
法律
(PDF:217キロバイト)・
改正の概要(法務省作成)
(PDF:205.1キロバイト)・
父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました
(PDF:1.73メガバイト)・
こどもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A
(PDF:3.08メガバイト)