定年延長や人口減少を背景とし、60歳を迎えた後も働き続ける人(ここでは、高年齢労働者と表現します。)が増えています。
高年齢労働者は、身体の機能が低下すること等により、若年層に比べ労働災害の発生率が高く、休業も長期化しやすいといわれています。
ここでは、高年齢労働者が安全に働くことのできる環境づくりに役立つ制度などに関してご紹介します。
・高年齢労働者に安全に働いていただくためのガイドラインである「エイジフレンドリーガイドライン」
・高年齢労働者の労働災害防止のための設備改善や専門家による指導を受けるための経費の一部を補助する制度「エイジフレンドリー補助金」
・県内の介護事業者等が介護ロボットやICT機器等の介護テクノロジーを導入する経費の一部を補助する制度「福岡県介護DX支援事業費補助金」
・独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構による「高年齢者の雇用に関する相談・援助」
・65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成する制度「65歳超雇用推進助成金」
令和7年11月時点の情報となります。補助金や支給金は申請の受付期間が終了しているものもあります。詳しくは、各所管省庁や福岡県のホームページでご確認をお願いします。
エイジフレンドリーガイドライン
厚生労働省が令和2年3月に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」を策定しています。このガイドラインでは、高年齢労働者を現在雇用している事業場や、これから雇用する予定の事業者と労働者に求められる取組を具体的に示しています。
エイジフレンドリー補助金(厚生労働省所管)
厚生労働省が中小企業事業者を対象に設けた補助金で、高年齢労働者の労働災害防止のための設備改善や専門家による指導を受けるための経費の一部を補助するものです。高年齢労働者の雇用状況や対策・取組の計画を審査の上、効果が期待できるものについて、補助金が交付されます。すべての申請者に補助金が交付されるものではありませんので、注意してください。安全衛生対策には次のコースがあり、補助金の上限額や補助対象が定められています。
| 補助率・上限額 | 補助対象 | 対象事業者 |
・補助率5分の4 ・上限額100万円(消費税を除く) | ・労働安全衛生の専門家によるリスクアセスメントに要する経費 ・リスクアセスメント結果を踏まえた、優先順位の高い労働災害防止対策に要する経費(機器等の導入、工事の施工等) | ・中小企業事業者 ・1年以上事業を実施していること ・役員を除き、自社の労災保険適用の高年齢労働者(60歳以上)が常時1人以上就労していること ・高年齢労働者が対策を行う作業に従事していること |
| 補助率・上限額 | 補助対象 | 対象事業者 |
・補助率2分の1 ・上限額100万円(消費税を除く) | ・高年齢労働者の身体機能の低下を補う設備・装置の導入その他の労働災害防止対策に要する経費(機器等の導入、工事の施工等) ※具体的には、次の(ア)から(エ)までのような取組です。 | (総合対策コースと同じ) ・中小企業事業者 ・1年以上事業を実施していること ・役員を除き、自社の労災保険適用の高年齢労働者(60歳以上)が常時1人以上就労していること ・高年齢労働者が対策を行う作業に従事していること |
(ア)転倒・墜落災害防止対策
・作業場所の床や通路のつまずき防止のための対策(作業場所の床や通路の段差解消)
・作業場所の床や通路の滑り防止のための対策(水場等への防滑性能の高い床材・グレーチング等の導入、凍結防止装置の導入)
・階段への手すりの設置
・高所作業台の導入(自走式は含まず。床面から2m未満の物)
(イ)重量物取扱いや介護作業における労働災害防止対策(動作の反動・無理な動作対策)
・重量物搬送機器・リフトの導入(乗用タイプは含まず)
・介護における移乗介助の際の身体的負担を軽減する機器の導入
・介護における入浴介助の際の身体的負担を軽減する機器の導入
・介護職員の身体の負担軽減のための介護技術(ノーリフトケア)の修得のための教育の実施
・屋外作業等における体温を下げるための機能のある服や、スポットクーラー等、その他労働者の体表面の冷却を行うために必要な機器の導入
・屋外作業等における効率的に身体冷却を行うために必要な機器の導入
・熱中症の初期症状等の体調の急変を把握できる小型携帯機器(ウエアラブルデバイス)による健康管理システムの導入
・日本産業規格JIS Z 8504及びJIS B 7922に適合した WBGT 指数計の導入(1事業者につき1点まで)
| 補助率・上限額 | 補助対象 | 対象事業者 |
・補助率4分の3 ・上限額100万円(消費税を除く) | (転倒防止) ・労働者の転倒災害防止のため、専門家による身体機能のチェック及び専門家による運動指導を受けるために要する経費(役員を除き、5人以上の自社の労災保険適用労働者に対する取組に限ります。)
(腰痛防止) ・労働者の腰痛災害の予防のため、専門家による身体機能のチェック及び専門家による運動指導を受けるために要する経費 (役員を除き、5人以上の自社の労災保険適用労働者に対する取組に限ります。)
| ・中小企業事業者 ・1年以上事業を実施していること ・役員を除き、自社の労災保険適用の労働者(年齢要件なし)が常時1人以上就労していること
|
| 補助率・上限額 | 補助対象 | 対象事業者 |
・補助率4分の3 ・上限額30万円(消費税を除く) | ・事業所カルテや健康スコアリングレポートを活用したコラボヘルス等、労働者の健康保持増進のための取組に要する経費(役員を除き、自社の労災保険適用の労働者に対する取組に限ります。)
| (転倒防止・腰痛予防のための運動指導コースと同じ) ・中小企業事業者 ・1年以上事業を実施していること ・役員を除き、自社の労災保険適用の労働者(年齢要件なし)が常時1人以上就労していること |
介護現場の生産性向上による職場環境の改善を図ることを目的に、県内の介護事業者等が介護ロボットやICT機器等の介護テクノロジーを導入する経費の一部が補助されます。
重点分野に該当する介護テクノロジー
次の(ア)から(ケ)までの経済産業省と厚生労働省が定める「介護テクノロジー利用の重点分野」に該当する機器等の導入経費が対象となります。
(ア)移乗支援、(イ)移動支援、(ウ)排泄支援、(エ)見守り・コミュニケーション、(オ)入浴支援、(カ)介護業務支援、(キ)機能訓練支援、(ク)食事・栄養管理支援、(ケ)認知症生活支援・認知症ケア支援
| 区分 | 基準額 (※) |
| (ア)移乗支援、(オ)入浴支援の場面において使用される介護ロボット | 100万円 |
| 上記以外 | 30万円 |
※補助額は補助対象経費の実支出額に4分の3を乗じた額と、基準額を比較して、少ない方の額を補助します。
重点分野に該当しないその他の機器
前述の「重点分野に該当する介護テクノロジー」によらず、介護従事者の身体的負担の軽減や間接業務時間の削減等の業務の効率化など、介護従事者が継続して就労するための職場環境整備として有効であり、介護サービスの質の向上につながると判断される機器等の導入経費を対象とします。
| その他の機器 | 基準額(※) |
| (ア)移乗や移動を支援する機器で重点分野に該当しない機器(床走行式リフト等)、(イ)調理支援などの職員の負担を軽減する機器(調理支援機器、配膳車等)、(ウ)生産性向上に資する福祉用具(移乗支援に関する機器【スライディングボード等】)、(エ)インカム、(オ)バックオフィスソフト、(カ)バイタル測定機器 | 100万円 |
※補助額は補助対象経費の実支出額に4分の3を乗じた額と、基準額を比較して、少ない方の額を補助します。
高年齢者の雇用に関する相談・援助(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構所管)
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では高年齢者の雇用に関する相談・援助、高年齢者の雇用に関する助成金の受付等の業務を実施しています。
65歳超雇用推進助成金(厚生労働省所管)
この助成金は、高年齢者が意欲と能力のある限り年齢に関わりなく働くことができる生涯現役社会を実現するため、65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う事業主に対して助成するもので、次の3コースで構成されています。
(1)概要
次の(ア)から(エ)までのいずれかを実施した事業主に対して助成が行われるコースです。
(ア)65歳以上への定年引上げ、(イ)定年の定めの廃止、(ウ)希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、(エ)他社による継続雇用制度の導入
引上げの内容や年齢の引上げ幅等に応じた金額が支給されます。
(ア)制度を規定した際に、専門家等に就業規則の作成または相談等を依頼し、経費を要した事業主であること。
(イ)制度を規定した労働協約または就業規則を整備している事業主であること。
このほか、高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実施している事業主であること等が必要です。
高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した事業主に対して一部経費の助成を行うコースで、対象となる措置は次の通りです。実施期間は1年以内となります。
(ア)高年齢者の職業能力を評価する仕組みと賃金・人事処遇制度の導入または改善
(イ)高年齢者の希望に応じた短時間勤務制度や隔日勤務制度などの導入または改善
(ウ)高年齢者の負担を軽減するための在宅勤務制度の導入または改善
(エ)高年齢者が意欲と能力を発揮して働けるために必要な知識を付与するための研修制度の導入又は改善
(オ)専門職制度など、高年齢者に適切な役割を付与する制度の導入または改善
(カ)法定外の健康管理制度(胃がん検診等や生活習慣病予防検診)の導入 等
(2)支給額
区分
| 支給対象経費 | 助成率 | 支給額 |
| 中小企業 | (A)雇用管理制度の導入等に必要な専門家等に対する委託費やコンサルタントとの相談に要した経費 (B)上記(1)概要に記載の(ア)から(オ)までの措置の実施に伴い必要となる機器、システム及びソフトウェア等の導入に要した経費 | 60% | 支給対象経費を初回に限り50万円とみなすため、支給額は30万円となります。2回目以降は、左欄の支給対象経費(A)と(B)をあわせて50万円を上限とする経費の実費に助成率を乗じた額となります。 |
| 中小企業以外 | 同上 | 45% | 支給対象経費を初回に限り50万円とみなすため、支給額は22.5万円となります。2回目以降は、左欄の支給対象経費(A)と(B)をあわせて50万円を上限とする経費の実費に助成率を乗じた額となります。 |
(3)主な支給要件
(ア)「雇用管理整備計画書」を(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長に提出して、計画内容について認定を受けていること。
(イ)上記計画に基づき、高年齢者雇用管理整備の措置を実施し、当該措置の実施の状況および雇用管理整備計画の終了日の翌日から6か月間の運用状況を明らかにする書類を整備している事業主であること。
(ウ)支給申請日の前日において1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者であって講じられた高年齢者雇用管理整備の措置により雇用管理整備計画の終了日の翌日から6か月以上継続して雇用されている者が1人以上いること。
(エ)雇用管理整備の措置の実施に要した支給対象経費を支給申請日までに支払ったこと。
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換させた事業主に対して助成を行うコースです。実施期間は2年から3年になります。
詳しくは、厚生労働省のホームページ
(外部リンク)をご覧ください。
対象労働者1人につき、中小企業は30万円、中小企業以外は23万円を支給します。ただし、1支給申請年度1適用事業所当たり10人までとします。
(ア)有期契約労働者を無期雇用労働者に転換する制度を労働協約または就業規則その他これに準ずるものに規定していること。
※実施時期が明示され、かつ有期契約労働者として締結された契約に係る期間が通算5年以内の者を無期雇用労働者に転換するものに限ります。
(イ)上記(ア)の制度の規定に基づき、雇用する50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換すること。
※無期雇用転換日において64歳以上の者はこの助成金の対象労働者になりません。
(ウ)上記(ア)により転換された労働者を、転換後6か月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して転換後6か月分の賃金を支給すること。