墳丘と石室
損ヶ熊・東向原丘陵の先端部にある、13基からなる古墳群の一つです。古墳は、若宮盆地の北東部の盆地入口に位置し、眼下には犬鳴川と山口川、有木川との合流点をそれぞれ望み、盆地内を見渡せます。
墳丘は、推定直径14.4メートル、推定高5.4メートルの円墳で、周りには溝が掘られています。墓道は、石室主軸方向より若干東側にはずれ「ハ」の字状にやや広がり、土坑状の堀込や、多数の柱穴を検出しています。
主体部は、複室の横穴式石室で、前室の長さは1.15メートルから1.60メートル、幅1.30メートルです。玄室は、長さ2.90メートルから3.05メートル、幅1.90メートルから2.00メートルです。
壁画
奥壁には、赤色顔料で描かれた幾何学的な装飾文様があります。高さ約2メートル、幅約1.8メートルの奥壁鏡石の上半部に、上下120センチメートル、左右140センチメートルの大きさに描かれています。図柄は格子状に交わる直線と、これと重なって×字状に交差する斜線からなっています。塗料が比較的よく残る部分では、盛りあげるように厚く塗布しているのが観察できます。
文様は赤色顔料一色で奥壁にのみ描かれています。一見すると計画性はないように見えますが、これを当時使用されたと思われる高麗尺(35センチメートル前後)の方眼をかぶせてみると、縦横の線がある程度これに沿うことが見てとれる装飾文様となります。
出土遺物と古墳の年代
石室は盗掘にあっていましたが、前室床面を中心に多数の土器類が原状をとどめて出土しました。また玄室埋土からは鉄製武器・玉類・耳環が出土しました。出土遺物から、古墳の築造は6世紀後半から7世紀初頭であり、その後7世紀後半にかけて追葬がおこなわれたと考えられます。
※損ヶ熊古墳は現在石室の公開は行なっていません。墳丘のみ見学が可能となっていますのでご注意ください。